妊婦さんが初めて風疹にかかると、胎児(お腹の赤ちゃん)も感染して白内障、心奇形、難聴といった先天異常を生じることがあります。
これを先天性風疹症候群(以下、CRS)といいます。
風疹は発熱、リンパ節腫脹、発疹などの症状がでますが、約25%の方は無症状(不顕性感染)で気づきません。
さらに妊娠中に初感染すると、胎内感染(胎児への感染)およびCRSを防ぐ手段もありません。なお、再感染の場合には胎児への影響はないと考えられています。
風疹の初感染を予防するためにはワクチン接種が必要になりますが、生ワクチンのため妊娠中に接種することは推奨されていません。
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よって、妊娠前に風疹抗体価(風疹ウイルスの抗体があるか、また抗体価を調べる)を測定し、免疫があるかどうかチェックをして、免疫がない場合はワクチン接種して予防することしかできないのです。
また、免疫ができるまで4週間かかり、2ヶ月は避妊しなければならないため、妊娠を考え始めた時、早期に確認すべき重要ポイントになります。
抗体検査はクリニックなど有料で検査できますが、妊娠を希望する女性を対象に保健所で無料で受けられます。ただし、自治体によって実施状況は異なるため、確認が必要です。
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ここでは、妊娠中の風疹感染について、また、どういったときにワクチンが必要か(風疹抗体価の見方)説明していきます。
罹患妊娠週数とCRSのあらわれ方
風疹したときの妊娠週数によって胎内感染とCRSの発症率が違ってきます。
※胎内感染すると100%先天性風疹症候群を発症するわけではありません。
妊娠12週未満
この時期に妊婦さんが感染すると、80−90%の確率で胎児も感染し、90%以上の確率で先天性風疹症候群を発症します。
妊娠12〜18週まで
難聴のみ発症することがあります。
妊娠18週以降
胎内感染は40%の確率でありますが、ほとんどCRSを発症することはありません。
風疹抗体価(HI抗体価)の見方
血液検査で、だいたい1週間で検査結果がわかります。
8倍未満
・風疹に対する免疫がない(まだ風疹感染したことがない、またはワクチン接
種したことがない)状態です。
=今後、罹患する恐れがあります。
→ワクチン接種が勧められます。
8または16倍
・風疹に対する免疫が低い(感染またはワクチン接種の既往はあるが、時間の
経過や体質によって抗体が低くなっている)状態です。
=感染予防には不十分なため、感染によって胎児への影響がある場合があります。
→ワクチン接種が勧められます。
32、64または128倍
・風疹に対する免疫があります。
=1年以上前に感染して得た免疫またはワクチン接種の既往があり抗体価が正常に保たれている状態です。
→接種の必要性はありません。(風疹感染しても母子感染を生じる可能性は低いからです)
256倍以上
・風疹に対する免疫があります。
・現在または最近2年以内に初感染を受け抗体価の上昇をみた可能性があります。
・これから妊娠する場合には問題ありません。
(現在感染しているかどうかは、1−2週間後にサイドHI抗体価を測定して、変化を見ることもできます。4倍以上の上昇があれば現在の感染です。また、IgM抗体は感染後4日間で陽性となるため、検査して評価も可能です。)
→接種の必要はありません。
風疹含有ワクチンは、麻疹対策を考慮して「麻しん風しん混合ワクチン」が推奨されています。